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勢いだけで触れたものへの感想を残していくブログ。

ルパン三世 PART5 感想

今年の4月から先日まで半年に渡って放送されていたルパン三世PART5を全話通して視聴したので、今回はその感想を残しておきたい。

Twitterの方には基本ポジティブな感想をメインに書いていたが、こちらは否定的な面も記そうと思っているので悪しからず。

 

2年ぶりのテレビシリーズ、私自身前回のテレビシリーズ前後からこのジャンルにハマった為今回の放送を大変期待していた。

全体を通してその期待を裏切らない大変質の良いアニメーションであると言った印象を受けた。個人的にテレコムアニメーションフィルムの作画がとても好きなので、今回のシリーズの映像も期待以上に見応えのあるものであったと思う。背景美術、キャラクター達の細かい表情の変化には特に感動させられた。

 

ストーリーの方も大変良く作りこまれていて、1話完結ではない続きもののエピソードが4つ組み込まれていたこともあり次週のストーリーを予想したり、同じ作品を観ているもの同士で考察し合ったりしながら毎週ワクワクと放送を待つ日々を送っていた。バラエティーに富んだ単発回も箸休めというには贅沢すぎる程様々なシリーズのルパン像を観ることが出来て嬉しかった。

 

一方で気になった点も幾つかある。

その一つは脚本作りに関してだ。ルパン三世という作品における好きな部分について聞かれたら、私はいつも第一にキャラクター達の台詞回しを思い浮かべる。昭和のTVシリーズにおいてもTVSP初期の作品においても海外映画を観ているようなちょっと洒落込んだニヒルな台詞回しから、ハードボイルドに酔いしれる何とも擽ったい気分を味わえるのが好きだ。だが今回のPART5ではそういった気分を余り感じられなかった気がするのだ。

EP2(雑破業さん)と19話(時雨沢恵一さん)の脚本はその点とても好きだった。登場キャラクター達がよく立っていて、それぞれの魅力を活かしたキャラクターらしい台詞回しがされていたなという印象を受けた。また徹底してコメディー色に転じた6話(酒向大輔さん)の脚本も、この回全体をどのように見せたいかの方向性が大変わかりやすく伝わってきて素晴らしい出来であった。

その他のエピソードに関してはもう少し文学的でニヒルなそんな台詞回しが欲しかったなと思う。伏線を張るという点に徹しすぎて、台詞の間を大切にすることを忘れてしまったような残念さを感じた。

 

またもう一つ気になった点はEP1の時点から''ルパン三世らしさが欠けていた''という点についてである。

ルパン三世という作品としてもキャラクターとしても、どちらにせよ今回のシリーズはその''らしさ''に欠けていた。このシリーズはルパン三世をどんな像として描きたかったのであろうか?

 

1話の冒頭、またEP4ラスト(最終話ラスト)で言われていたのを観るとルパン三世をヒーローとして描きたかったのであろうことが伺える。況してやフランス国民からまた世界から応援される、そんなある種の国民的ヒーローのような。

ルパン三世をヒーローとして描きたかったのであれば、何故23話においてその一番の右腕であり相棒である次元大介が警官を相手に大量殺戮したともとれる描写を組み込んだのであろうか?一般市民の味方である警官を殺してしまうような相棒を持つ泥棒がヒーローと言えるのか?

次元が大量殺戮を行ったかもしれない事実に関しては、元殺し屋である過去があることや銃の才能で生きていくことしかできない人物であることからもキャラクター像を疑う気は特に起きなかった。誰かを殺して尚笑っている、本来そういう一面のあるキャラクターであると勝手に心の奥底で思っていたからかもしれない。

だがPART5で描きたかったルパン三世像がヒーローであったならば、何故23話であのような描写を入れなくてはならなかったのかが分からないのだ。ただ格好良さを魅せるためという理由であったならばそれはあまりに浅はかなことであろう。倒していた相手が悪者であったならば次元の実力を存分に楽しめる名シーンであったからこそ、次元ファンとしても悔しさが残る場面であった。

 

また峰不二子石川五ェ門について。PART5では2人揃ってルパンと自分の関係性について頭を悩ませその事が大問題の元となっていたが、本来関係性に執着するようなキャラクターであっただろうか?五ェ門はそのような面があったとしても今回のシリーズの設定である''過去の全シリーズを通ってきた五ェ門''であるとするならば今更そんなことに執着する理由が見つからないし、不二子に関してはそもそもルパンとの絶妙な関係に納得しそれを楽しんでいる女では無かったのか。PART4でレベッカに自信ありげに語っていたルパンの求める女像とは何だったのか。幾ら考えても今ひとつ納得するのに至らなかった。

 

作品のテーマでも男の世界が歌われるように、ルパン三世という作品を語る代名詞に男のロマンがあるのはどの時代においても変わらない事実であろう。PART5は現代(やや近未来に近い?)に舞台を置いたことを意識し過ぎたせいで、上記のような脚本や作品像やキャラクター像など一つ一つの点において少し男のロマンに欠けてしまったような印象を受けた。アニメーションとしての出来が素晴らしかっただけに個人的にこの点は非常に残念だ。

 

私自身の活動拠点であるTwitterにおいて基本的にポジティブな感想しか呟いていなかった分こちらではややネガティブな感想が目立ってしまったが、平成最後の夏もルパン三世という作品の新作が目を見張るようなアニメーションクオリティで観られたこと、また小林清志さんの声の次元大介が聞けたことには心から感謝している。平成という一つの時代が終わってしまうが、また新しい時代にもきっと作られることになるであろうルパン三世という作品を今後も応援しつつ更に次作にも期待したい。